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ヘブライズムの唯一神と違って、ギリシャ神話の神々はいかにも人間に近い。空も飛べたりして身体能力は優れているが、姿は人間と同じで、恋もすれば浮気もするし、頭に来るとやたらに仕返しをする。そしてそんな神から生まれた子供が、人間だったりするのだ。今回取り上げるオリオン座は、神話の主人公には珍しく人間である。職業は漁師さん。

父親は海神のポセイドン、母親は大地の女神ガイアであったといわれる。人間ではあったが、さすがに血統がよいので非常な美男子で、怪力の持ち主だった。その上、父親のポセイドンから「海の上を歩く」という超能力を授かっていた。漁師としては、これは有利だよね。船から落ちても大丈夫。
そういえば、イエス・キリストもガリラヤ湖の水面を歩いたという話が聖書に載っている。二つの話には、何らかのつながりがあるのかも知れない。

さて、漁師のオリオンは、キオス島の王オイノピオンの娘、メローぺを愛してしまった。結婚したいと父親の王に申し込むと、たぶん身分の違いからか王は気が進まなかった。それで、「島を荒らす恐ろしい野獣を退治したら娘と結婚させよう」といじわるをした。

ところが、怪力のオリオンは難なく野獣を退治してしまった。困った王様は、オリオンに酒を飲ませて眠らせ、目をつぶして海岸に捨てたのだという。どん底に突き落とされたオリオンだが、それからある島に行って太陽の光による治療をしたところ、視力が回復した。

しかし自分を助けてもくれなかったメローぺへの愛は冷めていた。オイノピオン王に仕返しをしてやろうかとも思ったが、一介の漁師では、王様の兵隊に返り討ちに合うのが関の山。鬱屈した気持ちを抱えながら、生活はすさんでいった。相手構わず乱暴したり、ものを壊したりして大暴れである。

これを見かねた母親のガイアは、遂に毒サソリを送って自分の息子を殺してしまった。毒サソリは、オリオンの乱暴に腹を立てた女神アルテミスが送ったものだという説もあるが、息子を哀れんだ母親が送ったという方が当たっているような気がする。

オリオンは人間だったので、サソリの毒で簡単に死んでしまった。サソリを送ったのがまさか母親だとは知らないオリオンは、星座になって空に昇ってからも、サソリとは顔を合わせないように逃げ回っているそうである。実際に、さそり座とオリオン座が同時に夜空に現れることはない。


冬の大三角とオリオン座

冬の大三画




冬の夜空に明るく輝く、一等星ばかりの三角形です。プロキオンはこいぬ座のアルファ星、全天で一番明るい恒星であるシリウスは、おおいぬ座のアルファ星です。オリオン座のベテルギウスは、「わきの下」という意味。オリオンの四辺形の対角線にあるベータ星のリゲルは、「左足」という意味なんだそうです。きれいに並んだ三つの星は、オリオンの腰のベルトです。

オリオン座は、全天でも最も明るい星の集まった目立つ星座です。形も均整がとれていて美しい。三つ星が並んでいるのは単なる偶然ですが、明るさの揃った星が三つ直線上に並んでいるのは、まさに奇跡的。最も目立つこの星座が、神様でなくて人間だというのも意味ありげ。

この写真はリンクページでもご紹介している Stellar Scenes の栗田直幸さんが撮影されたものです。




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