− 先日 matisse さんが突然うちのHPに来られたときは、ちょっとびっくりしました。翻訳関係の方に情報を利用していただけるのは大変嬉しいですね。それと、あの「辞書引き」コーナーを見てから発憤されて、QXの自動辞書引き機能を導入されたそうですね。

自動辞書引きについては、それまでも本や雑誌で読んでいたはずですが、具体的にイメージがつかめませんでした。でも yook さんのHPの実際の画面を見たら「これ、やりたい! ぜったい、やりたい!」って思いました。

 − なるほど。やっぱり画像はインパクトがありますよね。お役に立てて良かったです。今では当たり前のように使っている自動辞書引き機能ですが、はじめてポップアップを見たときは、正直言って私も感動しましたよ。マックでは、たぶん今でもこれができるソフトはないと思います。私がマックに戻れない最大要因の一つです(笑)。

ところで、マクロは難しいとおっしゃってましたが、最近は使えるようになったのですか?

そもそもマクロって何なのかすら、まだよくわかっていないもので・・・。

英辞郎をニフティからダウンロードしたとき、A-F、G-P、Q-Z の3つのテキストファイルに分かれていました。それをひとつのファイルにするのに、どうしたらいいかさっぱり分からず、右往左往していたときにねこみみさんの「QXファイル連結マクロ」に出くわし、無事英辞郎が使えるようになりました。マクロを使ったのはこの 1 度だけです。

 − ほお、最初から「ファイル連結マクロ」とは……。でもおっしゃるように、英辞郎をQXの自動辞書引きで使用できるようにする手順というのは、ワードのような出来合いのソフトばかりを使ってきたユーザーにとっては、かなりの難事業でしょう。「Readme に書いてあるとおりにやればいい」と言われますが、オンラインソフトになれていないユーザーの方々は結構苦労されているようですね。

いずれにしても、matisse さんがマクロを使えることは確実なわけで(笑)、今後は、「こんな事がしたいな」と思ったら、島田さんの「ユーザーズ・マクロ・ヘルプ」で、あちこち探検してみることを是非お勧めします。

いや、それが、「ファイル連結マクロ」をQXにセットしたものの、3日間くらいは使えなかったんです。該当ファイルを選べって書いてあるのに、ファイルなんてどこにも見えない。それまで、辞書引き導入プロセスでは、あっちこっちで苦労しながら、やっとここまで来たのにと思うと悔しくて悔しくて……。3日目、ごはんを食べていると、ふと「拡張子」の3文字が頭に浮かんで……ためしに「.txt」と入力してみたら、突然ファイルが見えるようになったんです。なんか、念力が通じて乗り越えちゃったような感じで。いまだに本来どうすべきだったかはわからないまま。ですからまだまだ前途多難です。

 − そうか、最初のダイアログのところで引っかかってしまったんですね、ふーん。マクロ師さんたちが当たり前と思っている部分に、案外初心者の方々は躓いているんですよね。ねこみみマクロのReadmeはどちらかというと分かりやすい方ですが、プログラマの方々というのは、説明をちょっと簡潔にしすぎる傾向があるようです。

手前味噌で申し訳ないのですが、島田さんのHP に置かせていただいている拙作マクロの中に「グロッサリーマクロ」というのがあるんです。これは、マクロ自体の出来はさておき(笑)、Readme だけはねこみみさんに誉めていただいたんですよ。数少ない自慢の種です。

それから拡張子の問題ですが、確かにQXを使い始めたばかりのユーザーにとっては理解しにくいコンセプトかも知れません。itam さんのメルマガHPのバックナンバーに、拡張子に関する詳しい解説がありますから、一度お読みになることをお勧めします。この辺が頭に入ってくると、QXの世界がさらに大きく開けてきますよ。それと同時に、Windows やパソコン一般に関する基本も呑み込めてきます。ワードばかり使っている限り、全く触れずに済んでしまう部分なんですが・・・。

QXを使いこなして行くに連れて、matisse さんも「テキスト主義」にだんだん目覚めて行かれるのではないでしょうか。特に我々文筆に携わる人間にとっては、「テキスト」こそ一番大切な部分であって、残りは言ってみれば枝葉の部分ですからね。

あ、ちょっと調子に乗って余計なおしゃべりが過ぎました。それでは、いつものインタビューパターンに移りたいと思います。よろしくお願いします。

さんのプロフィール

職業:

翻訳&ライター

自己紹介:

生態としてはモグラ系。高い所と夏の直射日光が苦手。yookさんやたくきさんと同年代の雌です。

使用マシン:

DELL のデスクトップ

主な使用ソフト:

QXエディタ、MSWord、筆まめ、やるぞ青色申告


 − QX使用歴はどれくらいですか?

半年です。6月に『ワードを捨ててエディタを使おう』の本を買って、付属のCD-ROMからインストールしました。

 − 主としてどんな作業にQXを使用していますか。翻訳の実務について、差し支えない範囲で具体的なお話をしていただけると嬉しいのですが。

 ひたすら和文の文章書きに使っています。

 翻訳の作業では、まず英語の原文をスキャナとOCRソフトでテキストデータに落とします。QXの画面をディスプレイいっぱいにして、原文の英文ファイルと訳文用ファイルのウインドウを縦に二つ並べます。英文ファイルの方はポップアップで辞書引きができるようにセットしておき、英文を見ながら、訳文を隣のファイルに書きこんでいきます。

 − では、常駐リストはお使いではないのですか? これが使いこなせるようになると、ぐっと便利になりますよ。それと、ウインドウはどうやら左右に二つ並べておられるようですね。これはよく翻訳支援ソフトなどで見る形ですが、編集ウィンドウが狭くなってしまうので、個人的には好みではありません。

ぷらねたりうむ→QXエディタで翻訳→「特設コーナー:翻訳作業効率化の一例」
で、拙作のマクロを使って、一つの画面上で辞書引き機能を使いながら翻訳する方法を紹介しています。一つのアイデアですが、編集画面をできるだけ大きく取るためにはよい方法だと思っています。これですと、常駐リストを表示しても画面幅が十分なので、英文の行末に改行がある場合も、折り返されずに表示されてすっきりしますよ。まあ、お暇があったら参考にしてください。

あの記事を見て、感激したのが yook さんのHPに書きこみに行った最大の動機なので、近いうちに試してみます。今後いろいろ試行錯誤して自分にいちばんラクな方法を見つけたいと思います。

 − そうなんですか。まあ、マクロの使い方になれる必要がありますし、各自の好みの問題もありますので、時間をかけて最もやりやすい方法を選ばれるのがよいでしょう。その他に工夫されていることなどありますか?

そうですね。ポップアップで辞書引きできるのは「英辞郎」という辞書だけなので、もっと詳しい辞書が必要になったときは、CD-ROM 版「ランダムハウス」で検索します。以前は原文は紙で、訳文はパソコン上で、と視線の移動が激しく、また訳抜けのリスクも高かったのですが、この方法に変えてずいぶん楽になりました。

 − この「視線の移動をなるべく小さく」というのは、効率化の上でも、ストレス軽減の上でも、重要なポイントだと思います。ハードコピーを見ながら翻訳するのとは、大違いですよね。

それと辞書引きですが、「英辞郎」による自動辞書引きはあくまでも補助的なものでしょう。自分の知らない単語の場合は、私も DDWIN と言う検索ソフトを使って、リーダース・プラスとか、ビジネス関連の専門辞書、マグローヒルなどの EPWING 対応の CD-ROM を HDD 上にコピーして使っています。CD-ROM ドライブ上で直接検索するより、ずっと高速で快適ですよ。

ええ。これも重々承知しております。ただ、なにせパソコンのこととなると、なかなか実行に移せなくて…… やっぱり今日はやめておこう、っていうのが積もり積もって半年一年経ってしまうんです。

 − いや、わかりますよ(笑)。私の場合は、やりたいことがあると我慢ができないたちなもので、仕事があるのに後回しにして環境を整えたりマクロを作ったりして、あとで後悔することがあります。環境いじりやマクロいじりは、あくまでも仕事が暇なときにやるべきでしょう。能率を上げるために使っているQXで、却って時間が無駄になるのでは本末転倒ですからね。何事も程々が肝心です(笑)。

さて、matisse さんは翻訳関連で、まだQX以外のソフトを使われることはありますか?

 ごくたまに和文英訳の作業や英文レターを作成するときなどは、まだワードを使っています。QXのスペルチェックと英文フォントの指定方法をマスターしていないからです。yook さんのホームページの「ビギナーの部屋」にもQXでスペルチェックを使う方法が出ていたと思いますので、これから少しずつ挑戦する予定です。

 − スペルチェックは、ワードを使っている人ならワードの辞書ファイルがそのまま使えますから、実際にやってみれば「なあんだ、簡単じゃん」と思われるでしょう。

しかしワードに付属している豊富な英文フォントを使うには、(隠し機能の)「欧文用QX」というのを使う必要があります。これについても、ビギナーズルームで紹介していますし、かぶねこさんのHP にはずっと詳しくてまともな解説がありますよ。是非試してみてください。これをやるには、まずショートカットによる「起動オプション」と言うのを理解している必要があります。これさえマスターすれば、あとは一発でしょう。

欧文QXが使えるようになると、いろいろなフォントを使って、QXだけでかなり美しい印刷もできるようになります。ただし、レイアウトなんかにこだわる場合には、かぶねこさんのページを参考にして、WinLPrt を使うと良いそうです。

そこまでできるようになれば、本当に「ワードを捨ててしまえる」わけですね!?

 − たぶん(笑)。私は最初に捨ててしまったので、なんと言って良いのか分かりませんが。
でも、用途によっては、ワードにも使い道はあるのかも知れませんね。個人的には、「顔を見るのもイヤ」なので(笑)、今使っているサブマシンにはインストールしてありません。doc ファイルは、ワードパッドで開いて見ます。でも最近は、翻訳会社でも doc ファイルではなくて pdf が主流になってきたので、ますますワードは要らなくなってきましたね。ちなみに、どうしてもワープロソフトを使いたい場合は、一太郎を使っています。日本人が作ったソフトですから、インターフェースが分かりやすいです。

さて、matisseさんはごく普通の(笑)翻訳家として、ずっとワード一本槍だったようですが、QXを使い始めたきっかけは何でしたか?

 数年前からずっとワードで特に不満はありませんでした。よくフリーズを起こしていましたし、バージョンアップのたびに一見便利だけどわたしには不要な機能がついてきて、それを解除するのに手間取ったりしましたが、エディタを知らなければ「パソコンなんてそんなもんだろ」ですんでいました。

 ただ、2、3年前ごろから翻訳者が文字入力以外のパソコン機能を活用している記事などを目にするようになり、ちょっと気になり始めました。いろいろ読んでいると、どうやらエディタというソフトを使えるようになることが先決らしい、とわかり、それで重い腰をやっと上げたというわけです。

 − なるほど。で、使ってみると、ワードを使っていた頃があほくさく思われたでしょう? 皆さん、ワードではずいぶん無駄な作業をしているし、時間も無駄にしているし、それにあの画面色二元主義は、本当に目に悪いと思います。

あはは、でも、わたしつい最近までQXも白地に黒文字でやってたんですよ。自動辞書引きを導入したら、ポップアップ箇所がどぎつい色で目に痛く、それではじめて色のカスタマイズをする気になったんです。今はグレー地に白文字、ポップアップは薄グレーです。

 − そうですね。色のカスタマイズはQXに慣れるための第一歩でしょう。それと、簡単なようでなかなか奥が深いです。楽しめますよね。私は今でも、仕事に気合いが入らないときなど、その辺を走ってきてから、頭を切り換えるために色設定を変えることがあります。かなり効果がありますよ。

では、最後におきまりの質問です。QXの気に入っているところを、三つだけ挙げてください。

1. ほとんどフリーズを起こさないこと。
2. 瞬間的に立ち上がること。わたしはデスクトップにQXエディタを置いておき、立ち上げたときの初期画面が「無題」ファイルになるようにしているので、何か「書きたい」と思ったら2秒後には文字入力できます。まさにメモ帳代わりです。
3. たくきさんの『ワードを捨ててエディタを使おう』の本があること。それからyookさんをはじめとした「QX党」の皆さんがいること。

オンラインソフトにはマニュアルもないし、市販の解説書もない、周囲に使っている友人もいないので、こういう本や党員(?)の存在は心強いです。皆さん、これからもよろしくお願いします。

 − こちらこそ、よろしくお願いします。初歩的な質問でも、同じところで躓いている人が結構おられるものですから、遠慮なくMLを活用されるのがよいと思います。先輩ユーザーの皆さん本当に親切ですからね。

本日はどうもありがとうございました。なんだか私の方がたくさんしゃべってしまいましたが、どなたかの参考になればと思います。



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