でるた さんのプロフィール

職業:

 以前は,日本IBMに約30年勤務(歳がバレますが…)。現在は各種学校の校長。実体は労働省の雇用促進事業(つまり、求職者のための職業訓練です)の民間受託校。
私自身、パソコンを含め、ビジネス系統の授業を教えています。副業はコンサルタントからカウンセラーまでやっています。

自己紹介:

 元は筋金入りの(?)SEであり、ビジネスマン。今は還暦を過ぎた、たんなるオヤジ。
孫3人。極めて多趣味(これを語り始めるとキリがない)。

使用マシン:

 自宅用にソニーVAIO M330 デスクトップ。職場用にソニーVAIO M300。CPUのパワーとHDDのサイズに泣いています。
最初のIBM5550 から数えて何台めだろうか…? 
外付けはZIPのみ。回線はISDN。

主な使用ソフト:

 現在の主なものは、WIN98SE、OFFICE2000(WORD、EXCEL)、N.C.4.7、それに QX と Qgrep くらいかな、あまり個性がないけど。
QX は 6.3 です。LOTUS1-2-3 とか WORD-PRO とか、いろいろ遍歴はあるんですけどね。あ、それから、ジャズ屋なものですから、Band-In-A-Box という音楽ソフトとヤマハのソフト・シンセを愛用しています。

QX使用歴:

 「鉛筆代わり」からです。年代は忘れちゃいました。あまり抵抗感もなく挫折もなく、わりとスッと入れました。

WEB サイト:

 恥ずかしながら、ありません。仕事用にはいつか作ろうと思っていますが…。




QTView プラグイン版 をすでにインストール されている方は、
縦書き版インタビュー 」 をお読み下さい。

 −  でるたさんはシステムエンジニアリングや教育関係のご経験が豊富なようですが、QXを主としてどんな目的に使っておられますか?

 原稿執筆と、授業用のテキストやレジメの下書き、それにメール用がほとんどですね。ただしテキスト類は紙で渡すことが多いので、印刷には WORD を使っています。GUI の観点からは、QXよりも WORD のほうが手っ取り早いので…(ゴメンナサイ)。でも縦書きの時はQXを使います。

 −  そうですか。翻訳の仕事で印刷を使うことは全くないんですよ。それで、印刷をするのもほとんど縦書きの場合だけですので、当然ながら印刷でもQXを使っています。QXの印刷プレビュー画面は、GUI の観点からもかなり優れていると思いますよ。実は翻訳屋のくせに WORD を使いこなしたことがないので、たぶん良さが分かっていないのだと思いますが。(笑)
 では、でるたさんが以前使われていたソフトとか、その後QXを使い始めたきっかけについて教えていただけますか?

 はい。DOSの頃は「E」というエディタを使っていました。その頃はパソコンの黎明期で、FDとかいろいろ使ったのを思い出します。FDの現代版って、何がいいのでしょう?

 −  知りません(笑)。わたしは、パソコンを使い始めたのが 1994 年ですし、最初はマックだったので DOS に関しては完全に無知です。これを読んだ方で、ご存じの方がMLで話題にしてくれるかも知れませんね。
ところで、一般には取っつきにくいと言われているテキストエディタに対して、違和感みたいなものはお感じになりませんでしたか?

 私の場合、昔から1バイト1文字(今でいう半角文字)に慣れきっていましたから、エディタ系のソフトは違和感どころか、空気みたいな存在でした。

 その頃IBMに「DOS文書プログラム」という、エディタを少し高級にしたようなワープロソフトがあって、これは愛用しました。今でも気に入っているのですが、ウインドウズの世界になってIBMがサポートをやめちゃったので、仕方なく(?)WORD に移ったのです。
 一太郎へ行こうかと迷ったのですが、たまたま当時は ATOK よりも MS-IME のほうが良かったので…。現在は ATOK13 を使っていますけど。

 −  わたしも仕事用の IME は Atok を主に使っています。今年になってから、仕事以外の執筆では WXG も使っていますが、一長一短ですね。しかし MS-IME のほうが ATOK より良かった時期もあったとは知りませんでした。私は、マックでは OS に付属の IME があまり良くないので Atok を使い始めて、Windows になってからもずっと ATOK ばかりです。
 IME の件はさておき、それまで軽快なエディタを使われていたのに、ワープロソフトは重いと思いませんでしたか?

 もちろん、そう思いましたよ。WORD の「カッタルさ」(ニュアンスはお判りと思います)にヘキエキしていた頃、知人が「鉛筆代わり」を紹介してくれて、試しに使ってみて、「これだ !!」とQXの魔界(?)にのめりこんでしまった…、そんな次第でした。
 だから私の場合、石器時代の「E」このかた、秀丸も何も知らずにQXの世界に純粋培養(?)されたみたいです。だから他のエディタのことは、ほとんど知りませんし、比較もできません。

 −  マック時代を含めてエディタの選択にはさんざん苦労しました。それが全く無駄だったとは思いませんが、最初からQXに出会えるなんて、ラッキーですよね。では次に、QXの気に入っている点を具体的にいくつか挙げてください。

 抽象的な言い方になりますが、最大のポイントは、「構造が柔らかい」ことでしょうか。マクロが組めるとか、あれこれカストマイズできることとか……。これはマイクロソフトの強引とも思える「お仕着せ」を使わされている立場としては、「これぞ自由の世界」と思える素晴らしいことだと思います。  ただし、注釈をつけたほうがいいと思うんですが、私の場合そう感じるのは、マクロとは長いつきあいだし、DOSの CONFIG.SYS や AUTOEXEC.BAT をつついてカストマイズする習慣があったし、というオタクの一種だったからだろうと思います。だからQXで .INI をつっつけば自由にカストマイズできることが「素晴らしい」と思えるのです。  しかしウインドウズの(たぶん 3.1 頃から)パソコンを始めた人々にとっては、それが素晴らしさというより、わずらわしさや面倒くささに通じる可能性が強いのはないかと、それを危惧しています。以前「書式を使いやすくしろ」と araken さんに注文をつけたのも、それが原点でした。
 その他細かいところでは「上書き保存 - 編集終了」とか、文書一覧からファイルを削除<できるとか、ふすま紙を選択できるとか、いろいろ気に入っています。主として「芸の細かいところ」ですね。

 −  「書式を使いやすく」というのは、数ヶ月前のMLでのご提案ですね。その件については後で触れることにして、QXに対する不満みたいなものもお持ちのようですが。

 そうですね。私にとって、現在のQXには「気になるところ」があります。
 一言で言えば、QXをもっとユーザーフレンドリーにしたい(初心者に取っつきやすい)ことです。あの時要望した書式設定の仕様はそうした希望の中の氷山の一角(?)でしょう。
 私の現役時代にはハードもソフトも仕事の上の「商品」でしたから、「エンド・ユーザー・フレンドリーとはどういうことか?」「初心者にも取っつきやすく、使いやすく、性能が良く、機能が良く、かつプロの使用に耐えるソフトはどうあるべきか?」 こんなことを、仕事としてしきりと考えたものでした。その後遺症のような哲学(?)が頭にこびりついて離れないようです。

 −  でも、一般に使われている「商品」がエンドユーザーにとって使いやすくて性能が良いかというと、必ずしもそうではありませんよね。たとえば WORD などは、でるたさんご自身も先程言われたように、非常にカッタルイ。「文章を書く」という作業に関しては決して使いやすいソフトではありませんよね。ただ最初からパソコンに入っていて「みんなが使っている」のと、雑誌などで派手に宣伝しているので、一般のパソコンユーザーは「これが良いに違いない」と思いこまされて使っているだけでしょう。
 つまり、その商品自体の善し悪しではなく、「マーケティングの勝利」だといえませんか(笑)。

 ええ。「マーケティングの勝利」という点では、WORD に限らず、EXCEL でも I.E.でも、同様でしょう。もっともそれをマーケティングというかどうかは問題がありますが…。
 でもね、WORD とQXは、守備範囲が違うところがあるんですよ。私自身も、WORD は重いだけじゃなくて機能的にも好きではないけれども、便利なところもあります。だから同列に比較しても意味がないんじゃないかと…。
 でも今のQXは、さっき言ったように素晴らしい製品です。だからこそ、余計に「今のままではもったいない」「ユーザーフレンドリーをもっと強化すれば、ビギナーにも取り組みやすい商品になるだろうに」という思い入れが強くなってしまうのです。

 車にたとえて恐縮ですが、QXは、ボンネットを開いてどうチューンアップしようと、どんなオプションを組み込んでカストマイズしようと、安全で高速で走ってくれるカスタム・カーのように思えます。それに耐えられる柔構造のQXは、素晴らしいシャーシでありエンジンであると思います。私の独断では、LINUXに通じる良さがあります。

 しかし一方でビギナーには、極端に言えば、とりあえずはアクセルを踏めば走ってくれるAT車が必要なのです。そして走っているうちに、あんなこともしたい、こんなことは出来ないかしら、と深みにはまっていく(?)のだろうと思います。マクロを使ってみてその便利さに感激し、ツールバーをカストマイズして「ああ、これぞ私のQX」と感激するように。

 そんなビギナーから見ると、QXへのとっつき具合は、きっと戦闘機のコックピットに座ったような気分かもしれません。そんな違和感が「取っつきにくさ」に通じてしまうんじゃないでしょうか。この理屈を押し進めると、ビギナー用には最小限必要なメーターやレバー以外は「見えないほうが気楽」だということになりますよね。そうした心理学的な意味では、ウインドウズのドロップダウンリスト方式は、良くできた仕掛けだと思います。ドロップダウンしない限り隠れてるんですから。

 −  確かにそれはありますね。最初にQXをインストールしたとき、デフォルトで表示される常駐リストを見て、非常にマニアックな印象を受けたのは事実です。標準の色設定も独特ですしね(笑)。
 しかしQXの場合は、最初から、プログラマーなり、文筆業の人なり、特定の目的や指向性を持ったユーザーが、このソフトを意図的に選択するわけですよ。まあ、これがオンラインのシェアウェアソフトの商品としての限界でもあるわけで、言い換えると、QXをインストールする時点で「ユーザーも学習しなければならない」という暗黙の了解があります。その点についてはどうお考えですか?

 そこが一つのポイントだと思います。たしかにQXのユーザーは、「買ったシステムに入っていたから WORD を使い始めた」というのではなくて、テキスト系のものを入力するのに何か良いものはないか、探したあげくにQXにたどりつくケースが多いでしょう。
 でもそれは、そもそもテキスト文書なるものの良さを一般のパソコンユーザーが知らないから、という理由もあるのです。実際、ビギナーの人にテキスト文書を教えると、「こんな便利なものがあるのに、どうしてパソコン教室で教えてくれなかったのか」と言う人が多いのです。ファイルのサイズ一つとっても、WORD と比べてそのコンパクトさに腰を抜かす…、みたいなものですね(笑)。

 で、ユーザーは学習すべきかという点ですが、私は、極論すれば「ユーザーに学習させるのはメーカーの押しつけである」と思っています。パソコンも「何かをするための道具」ですから、道具の使い方は「シンプル・イズ・ベスト」です。特にパソコンの場合は、いまや(これから)車と同様の一般大衆の道具ですから、アクセルとハンドルだけあればよくて、ボンネットを開く必要もないのがベストでしょう。  車の場合も、昔はボンネットを開いてキャブレーターを突っついたりしないとエンジンがかからない時代があったように、パソコンもDOSの時代からの流れで、いわばボンネットを開きながらでないと使えなかった。ハードのアーキテクチャーを知り、コマンドを叩かないと動かなかった。だから一般ユーザーは「やむを得ず」勉強せざるをえなかったのです。
 そんな歴史の流れの中でパソコンは「エンドユーザー・フレンドリー」に手抜きをしてきた商品だった…、と私は思っています。なまじ勉強させられてきたユーザーが多くなったために、メーカーはそれに甘えてきた…と考えています。(例外的にマックは最初からそれを狙っていたわけで、だから「アイコンをマウスでクリック」というのは、ご存じのようにマックが元祖です。)

 −  では、現在のQXで初心者にとって「とっつきが悪い」のは具体的にはどんな点でしょうか。先ほどちょっと言いかけた「書式設定」に関する要望と合わせて、簡単にご説明願えますか。

 たとえばQXで書式設定をやりたいとするとしますよね。あれは「その他」メニューの中にありますが、ビギナーにとっては、それすらも「んんっ? なんで『その他』なの?」という違和感の一つなのです。
 それはさておき、ある書式を読み込みたい時に「あれ? どうして『設定の保存』から読み込むの?」とか…。これがもし、メニューが「設定他」になっていると「なるほど」で納得するし、書式の読込が「設定の保存」から外れて別メニューになっていれば、違和感は消える。こんな重箱の隅のような細かいことがビギナーには大事件なのです。
 でも「それは××さんのマクロで出来る」と言ってしまっては、「マクロってなぁに?」というビギナーには、話がこんがらがるだけです。

 −  まず「その他」メニューに違和感があるというお話しですね。お言葉を返すようで申し訳ありませんが(笑)、これはQX以外のソフトでもそうなっているものが結構ありますし、慣れの問題でしょう。一度「その他」メニューから書式設定を実行すれば、二回目からは迷うことはないと思いますよ。それに、この「その他」などのメニューも、ユーザーが簡単に書き換えられるという点こそ、初心者の方々に是非知ってもらいたいものです。

 こっちこそお言葉を返して恐縮ですが(笑)、違和感というのは慣れる前にあるんです。そして心理学からいいますと、いったん心に刻まれた違和感は、慣れだけでは消えないのです。それに、QX以外のソフトがそうだからQXもそれでいいとは思えませんし…。
 メニューもカストマイズできるのは、QXの大きなメリットの一つです。私が前に言った「素晴らしさ」です。でも、もう一つの問題は「初心者の方々に是非知ってもらいたい」ということを、どうやって知ってもらうのか、という点にあります。
 この意味で「鉛筆代わり」も「狛犬本」(鐸木能光著『ワードを捨ててエディタを使おう』の愛称)もその功績は大変なものだと思うのですが、だったら、違和感も消してもらいたい……と思うのです。

 −  違和感を感じるかどうかは、人によって違いますから「標準」を決めるのが難しいでしょうね。それと私個人の感じを言えば、違和感を無くすことによってQXの持つ独特の雰囲気もなくなって、いわば「大衆車」(自分はカローラに乗っているんですが)みたいなつまらないインターフェースになってしまうかも知れないと、ちょっと心配になります。
 それと「設定の保存」の問題ですが、この辺の仕様も、QXでは書式と拡張子が関連づけられているという点を理解してもらえれば、「読み込む」という操作をいちいちする必要がなくなるわけで、そのあたりも「ユーザーの学習」に任されているのだと思います。  個人的には、こういった学習を厭うユーザーにはQXを使いこなすのは無理だと思っています。QXの持つ高機能やマクロの便利さを享受するためには、最低限の学習は必要でしょう。そうして一つ一つ覚えてゆく過程もまた楽しいものですし。

 いちいち反論するようですが…(笑)、人間が学習を厭うのは、押しつけられているからです。好奇心があれば人間はみずから勉強します。
 QXでいえば、「こんなことは出来ないの?」「こんな時にどうすればいいの?」という好奇心(あるいは必要性)があれば、あれだけの機能や豊富なマクロがあるんですから、答えは何とでも出てきます。そして「そうだったのか」とQXの良さを認識し、「一つ一つ覚えていく過程の楽しさ」が向学心(?)を刺激し、ますますのめりこんでいく…、というプロセスを経るのだろうと思います。

 −  問題が教育論の方向に向いてきましたね(笑)。しかし確かに、QXというソフトウェアは学習の楽しさを教えてくれると思いますね。

 QXはユーザーのつっこんだ使用にたえられるだけの素晴らしい製品です。そういう意味では、私だって「QXの全機能を使いこなしてる」とは到底言えなくて、必要性に応じて片隅を囓っているだけです。  何度も言いますが、私は機能的にはQXに満足しているんですよ。でも外観というか体裁は、パーツむき出しの感じです。それがビギナーにアレルギーを起しているのではないかと、気になって仕方がないのです。だから中味は凄いカスタムカーだけど、ビギナーには乗りやすいAT車でありたいと思うんですね。乗用車の体裁をした…。

 −  うーん、QXの外観について言えば確かにデルタさんのおっしゃる通りですね。でも、とっつきやすい外観と、QXの持つ高度な使いやすさ、つまりすでに使い慣れたユーザーにとっての操作性の良さとは、はたして両立可能でしょうか? ちょっと難しいと私は思うのですが。

 これは、とっくの昔にビギナーを卒業した人には難問かもしれません。というのは、乗用車は「商品」だからです。私もSE時代に苦労したのですが、SEは「お客様に使いやすいシステム設計」を考えます。一方でプログラマー寄りの人々は、まず機能を考えます。極端に言えば「動けばいいじゃない」「使えればいいじゃない」という発想です。

 −  つまり、QXをすでに使い慣れているユーザーというのは、デルタさんのおっしゃる「プログラマー寄りの人間」になってしまっているという意味ですね?

 そうです。この両者の違いが「製品」を「商品」にもっていく時の難しさです。  もっとも誤解されると困るのですが、商品という言葉は俗なコマーシャリズムに浸ることと同義語ではありません。本当に良い商品は、自然にユーザーが増えて、売れていくものです。
 私個人としてはQXは商品であってほしいのです。なぜなら、繰り返しになりますが、製品として素晴らしいから、もったいないからです。

 −  「本当に良い商品は、自然にユーザーが増えて売れていく」というお話しには、世の中には例外が多すぎてちょっと同意しかねますが(笑)、QXの本当の良さをできるだけ多くのユーザーに知ってほしい、という気持ちでは私も人後に落ちないつもりです。
 ただ、ご存じのとおり、作者の araken さんご自身が「商品としてのQX」にあまり期待していないという、かなり決定的なファクターがありまして(笑)。このあたりが問題といえば問題ですね。

 そうかもしれません。もっとも araken さんが考えてらっしゃる「商品」のイメージにもよりますが…。私は決して箱に入ったQXを商品として売れといっているわけじゃないんです。

 −  では現実的な商売の話は棚上げしておいて(笑)、例えばどこかの大手ソフトメーカーからQXを「商品化」する話が持ち上がったとして、具体的にはどんな手が考えられますか?

 私は意外に簡単じゃないかと思っています。「ビギナーはどこでつまずくんだろうか?」というゼロに立ち返って、ビギナーに戻ったつもりで、今の設定やモロモロの画面を見直してみればいいのだと思います。プログラミングの大変なやり直しは、たぶん必要ないんじゃないかと思います。メニューのツリー構造を見直すとか、言葉をもっと選ぶとか、デフォルトをビギナー向けにするとか、そういう「お化粧」の問題のような気がします。

 −  ああ、QXの仕様や機能を変更するのではなく、デフォルトの外観だけを「とっつき易く」するという意味ですか。

 そうです。このへんについては、すでにこの「直撃インタビュー」のトップページにある iemura さんの『QxliteNB』、あるいはかぶねこさんの『お手軽QX』があるのですが(その発想の原点はたぶん私と大同小異だと思うし、作られたことには敬服しますが)、あれはあくまでも《カスタム》であり、導入段階の(とっつきの段階の)ユーザーフレンドリーを考えている私のスタンスとはちょっと違うものだと思えます。

 つまり、私の理想とするQXは、乗用車の運転席に座ると速度計しかない。しかしダッシュボードのどこかを押すと、タコメーターから何から、プロ向きの仕様が満載、ボンネットを開くとチューンアップのやり放題で、カスタムカーが出来上がる……、と、そんなイメージでしょうか。そしてQXは、この後半の部分については、たっぷりと機能をもっているのです。

 −  なるほど。これは、インストールする段階で「初心者用インストール」と「フル機能インストール」が選択できるようになっていれば、今でも実現が可能ですね。それと例の「書式の読込」だけは、デフォルトでふたみさんやハチコウさんのマクロが使えるようになっていれば可能ですし。
 しかし araken さんみたいなビギナーとは正反対の位置にいる人には「初心者にとって使いやすいインターフェース」がどんなものか見当がつかないかもしれません(笑)。

 うーん、そうでしょうか。そうかもしれませんね(araken さん、失礼!)。ですから、「カスタムカーのQXを、どうやったらAT車に出来るか」っていうプロジェクトをやってみたらおもしろいと思うんですが…。皆さん方も「自分がビギナーだったら」というフレッシュな観点からQXを見直してみると、アイデアが沢山でてくるのじゃないかと、確信しています。

 もっと端的に言えば、皆さん方がビギナーにQXを勧めるときに、ビギナーが違和感を感じなくて、いきなり良さを感じてもらえるような形…って言いましょうか。勧めやすい形とでも言いましょうか…。
 私だったら…、そうですね…、具体的にどこをどう改造したいというよりも、まずメニューの構造から考えたいですね。それと、言葉。デフォルトの画面。ヘルプとは別のチュートリアル…。そうすると「ふすま紙」から、共通設定と書式設定との整合性、印刷書式の設定(これは結構面倒くさい)まで、さまざまなものが含まれてくると思うんですね。
 ポイントは「ビギナーの感性」です。QX初体験のビギナーがQXに初めて触れて、何を感じ、どこを素晴らしいと思い、どこに違和感を感じるか、そこだと思います。

 −  なるほど。実は私自身も「パソコン初心者はQXを使わなくていいよ」みたいな感じを持っているんですが、もっと柔軟になるべきでしょうか。やり方によっては結構初心者にアピールするようなインターフェースの実現が可能かも知れませんね。しかし今のQXはこのままにしておいて欲しいという気持ちは、正直言って非常に強いです(笑)。
 考えられるメソッドとしては、現状のQXと平行して、ちょっと前に話題になった QX Lite みたいなのを araken さんに開発してもらうか、それともメニューやインターフェースだけを「取っつきやすく」変更した初心者向けのメニューでも起動できるようにしてもらうとか。それが可能であるとすれば、そのような初心者用QXでは、おっしゃるように設定面をもっと簡略化し、分かりやすいチュートリアルも必要でしょうね。
 しかしここで、当然予想されるQXユーザーからの意見として、「それなら何も無理にQXを使わなくたって、もっと他に使い方の簡単なエディタがあるじゃないか」というのがあると思うんです。実は私もこの意見なんですが(笑)。
 しかしQXには、安定性や縦書き機能の充実をはじめとして、他のエディタとはひと味違ったメリットがいろいろありますよね。例えば縦書き機能だけをとっても、QX自体がもう少し初心者フレンドリーになれば、作家などのパソコンをやや苦手としている文筆関係者にもファンが増えるのではないかと思います。
 まあ、こんな話をしているときりがないので、今回はこれで終了したいと思います。書式設定と拡張子の問題についても、いろいろご意見があるようですね(笑)。またMLで話題にしてください。

 本日は長いインタビューにつき合っていただき、本当にありがとうございました。読者の方々も、ご苦労様でした。



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