KENMOTU さんのプロフィール

職業:

産業翻訳

自己紹介:

妻、子供(一男一女)、母の五人暮らし。今年の2月、鎌倉の大仏に近いところに市内で引っ越しました。観光ルートからちょっと外れているのですごく静かで、自宅作業にはもってこいです。だからといって、能率が上がって収入アップということはありませんが...主な趣味は、楽器(笛、鍵盤)、エスペラント、パイプタバコ、バイクですが、やってみたいことはまだまだあります。「あなたは結婚をすべきではなかった」とは妻の弁。「あなたとは」でないところが、まだしもの救いです。

使用マシン:

SOTEC MICRO PC STATION

主な使用ソフト:

QX、QGREP、QTClip、KeyLay、EdMaxフリー版、IE、MS Word、MS IME、クラリスワークス、STARFAX。

WEB サイト:

なし(情報発信しないといけませんね)




QTView プラグイン版 をすでにインストール されている方は、
縦書き版インタビュー 」 をお読み下さい。

 − 産業翻訳をやっておられるんですね。まあ、同業者ということで、内輪話になってしまうと困りますが(笑)、質問するのが非常に楽しみです。

MLに参加した当時から、ごく稀に(笑)KENMOTU さんの投稿を見ていましたが、あまり積極的にご発言されたことがないので、今までインタビューを控えておりました。「たぶん学校の先生だろう」と予想していましたが、はずれですね。

AOM (Ask Only Member) と呼んでください。宗教団体の名称みたいですね 。(^^;

 − お、自作の略語ですね。私も良くやりますよ。英語人間の習性でしょうか。
雑談はさておき、質問を始めましょう。早速ですが、QXの使用歴と、いつ頃からQXを翻訳作業に使うようになったのかをお聞かせください。

2000 年現在で 4 年目ぐらいかもしれませんが、明確な記憶も記録もありません。Windows 3.1 から登録して使っていた「秀丸」からの乗換えなので、試用期間、登録後と継続して実務に使用しています。

 − ワープロはお使いではなかったのですか? 翻訳関係でも、ご多分に漏れずワープロ(特にMS Word)が強くて、エディタを使っている人はあまりいないですよね。翻訳業界の話も含めて、QX以前に使っていた執筆アプリについて、ちょっと具体的にお聞かせ願えますか?

そうです。「秀丸」を使っていました。といっても、これは Windows の話しです。以前は実務でも個人利用でも Macintosh のほうをよく使っていました。英作文の仕事が多いので、英語ワープロの種類が豊富であるという点からも、私には Mac のほうが好都合でした。なんといっても、WYSIWYG による設計は使いやすいものでした。Windows 3.1 は、似て非なるものでしたね。

ただし、ご存知のように、Macintosh には優れたエディタが皆無です。海外の製品に優秀なものがあっても、マルチバイト非対応という問題がありました。また、日本語を表示できたとしてもソートや検索置換の対応が不充分でした。英文和訳の作業量が増え始め、Windows 95 が登場した頃から Mac との決別を考えるようになり、現在では Windows のみです。顧客から、Windows で作成したファイルの納品が要求されるようになったことも大きな理由の一つです。

思い返せばずいぶんと無駄なことをしたと思いますが、かなりの間、NEC 98(その後 DOS/V)と Mac が共存しており、それぞれの機種を買い換えていました。この 98 を使っていた頃に、先進ユーザの知人からエディタの存在を知らされ、勧められました。それまでは、和文作成には「一太郎」や「松」、英文作成には高電社のなんとかいう英文ワープロを使っていました。

エディタに対しては、マニア志向の感じがあり、とっつきにくかったのですが、マクロが使えるというのが魅力でした。そこで最初に購入したのが「VZ」。非力な 98 マシンでもきびきび動作し、簡単なものでも自分でマクロを作って定型作業を効率化できるのはうれしかったですね。

Windows 3.1 になってからは「秀丸」を購入しました。事実上、ほかの選択肢はなかったような気がします。Mac の場合、複数のファイルを開いても1つのアプリケーションの中で複数の「窓」として扱われますが、「秀丸」の場合は、複数のファイルを開くと、複数の「秀丸」が起動するというのがとても奇異でした。

インターネットを積極的に使うようになってから、偶然、QXに出会い、複数のファイルが複数の「窓」として扱われることや、カラー表示が使えることが気に入り、購入しました。ことあるごとに「秀丸」ユーザにも勧めるのですが、改宗は困難です。私に積極性が欠けているのかもしれません。m(_ _)m

概して、個人の翻訳者はエディタを使う傾向が強く、翻訳会社やその社員はワープロを使う傾向が強いように思われます。フリーランスのように孤立無援の作業形態だと、できる限り作業を効率化しようとする意識が強くなるからでしょうか。

ただし、マイクロソフト関連製品を日本語化する場合、ヘルプファイルを rtf 形式にして、リンク情報などを保ちつつ翻訳する場合があります。このような場合には MS Word を使わざるをえません。すごくやりにくいです。まず、プロポーショナルフォントは、読む側にとっては効果的かもしれませんが、書く側にとっては非効率的だと思います。MS Word では下書きフォントに表示を切り替えられますが、制御情報の識別が困難になります。思考を中断することなく、大量の文書を作成する場合には、少なくとも私にとっては等幅フォントを使用したエディタが適しています。今後は、書式付きの文書が、html や TeX で作成されるようになればと淡い希望を抱いています。

 − 大変詳しいお話、ありがとうございました。インタビューするたびに感じますが、どのユーザーさんも遍歴というか、いろいろご苦労の経験があるんですよね。 では、次の質問です。翻訳以外では、どんなことにQXを使っておられますか? 

主にメールの作成です。QXにはこの目的に便利な機能やマクロが充実しているので重宝します。この場を拝借して、マクロ作家の方々に謝意を表します。その他の用途は、情報収集のためのスクラップブック、データベース、メモです。とにかく、文字情報を残す場合には、まず、QXを使います。

 − 翻訳の場合、外国語を同時に表示しなければならない都合上、縦書き表示は使えませんが、QXで縦書き編集することもありますか?

縦書き編集はしたことがありません。用途によっては縦書きも必要だと思いますが、昔から新聞などはすべて横書きになって欲しいと願っているほどです。縦書き文書に90度回転して挿入されたローマ字や数字は、どうしても好きになれません。縦書き印刷は、年に 1 回あるかないかという程度です。

 − うわ、そうなんですか(笑)。このインタビューも、QTView で読んでいる方々は、その「90度回転した」のを読んでおられると思います(ごめんなさい)。
でも、小説などの文庫本は全部縦書きで印刷されていますよね。私は、読むことに関しては縦書き表示の方が断然楽です。新聞が横書きになっちゃったら、困るなあ(笑)。インタビューの縦書きバージョンも用意してありますので、試してみてください。無理強いはしませんが(笑)。
さて次の質問です。KENMOTU さんはQXの、特にどんな部分を便利だとお感じになりますか? できましたら、基本機能とマクロの両方で、KENMOTU さんが重宝しているものをご紹介ください。

ほかの多くのエディタと比較したことがないので、的外れな点があるかもしれませんが

・ 抜群の安定性。
・ 文字単位に色指定ができること。
・ 希望どおりの英単語ワードラップ。
・ キー割り当てに2文字まで設定できること。
・ バインダ機能。
・ 柔軟なカスタマイズ性。

・ スペルチェックマクロ。これは、QXML で yook さんの発言によって MS の辞書が使えることが分かってから、飛躍的に精度が向上しました。改めてお礼を申し上げます。

・ em さん作成の短縮補完入力マクロ。高機能な英文ワープロにはたいてい装備されている機能です。このマクロが、QTClip のようにすべてのアプリケーションで使用できたらすばらしいと思います。

・ yook さんの翻訳用見出し付け支援マクロ。原稿がファイルで入手できる場合に、翻訳すべき対象が色づけされるのでとても効率的です。実務翻訳者ならではのアイデアと感心しています。

・ その他、itam さん、Si さん、はえ男さん、ハチコウさん、かぶねこさん(順不同)など、QXML で助けていただいた方々の多くのマクロ。本当にありがとうございます。

 − 拙作のお試しマクロも使ってくださってるんですね。他の専門家の皆さんはともかく、私のマクロなんぞは、こちらから使ってもらっているお礼を言いたいくらいです(笑)。でも、うれしいですね。

それでは、ご自分の体験を含めて、初心者がQXに躓かないための注意点とか、先輩ユーザーとしてのアドバイスなどありましたら、お願いします。

Windows 添付の「メモ帳」もエディタの一種だと思うのですが、QXのような高機能エディタは、「メモ帳」にちょっと毛の生えたものだろうと気楽に考えると、多機能であるがゆえに混乱するかもしれません。すべての機能を使いこなそうというのではなく、自分自身の用途に合った基本機能を見つけ、組み合わせ、それでも解決できなければマクロを作ればいいと思います。そのためにも、QXML のような情報源は貴重です。私もそうでしたが、一般のユーザは、まず、ワープロソフトを使うと思います。そして、ある程度ワープロを使いこんだ時点で、ワープロにはない機能をエディタに求める場合が多いのではないでしょうか。それぞれのプログラムの限界を知って使い分けることも必要だと思います。

 − 最近は itam さんがメルマガを始めたりとか、ユーザーのすそ野を広げようみたいな動きもありますし、 araken さんも初心者を意識してマクロのインストール方法を変更したりという事情もありまして、QXもずいぶん初心者フレンドリーになりつつあると思います。これについては、どうお考えですか? 「マイナーなQXの方が好き」という人も中にはいるようですが(笑)。

初心者フレンドリーの方向は、できる限り進めていっていただきたいと思います。多くの人にQXの素晴らしさが知られないのは残念です。ただ、私にとってエディタは、一般にワープロよりも敷居が高かったので、ユーザの側でも努力が必要ではないかと思います。オートマ車とレーシングカーの違いに似ているような気がします。また、QXを紹介する場合、膨大な「できること」を列挙することももちろん必要かもしれませんが、ほかのエディタと比較して「できないこと」を紹介するのも面白いのではないでしょうか。それによってQXに対する好感度は増しても、決して恥にはならないと思います。

 − うーん、なるほど。そんなのもありですね。メルマガで紹介してもらうとか。

実は私も先日、知り合いの女性にQXを勧めたのですが、結構コンピュータの使える人なのに「テキストエディタとは何か」から説明しなくてはなりませんでした。QXを含めて、テキストエディタの価値が一般の人に理解されるためには、かなりの努力が必要だと実感しました。これからも、機会を捉えて啓蒙活動を続けたいものですね。その意味で、狛犬本は強力な味方になりそうです。

本日は、いろいろと参考になるお話、どうもありがとうございました。



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